1.投資信託の基本

① 投資信託とは?

投資信託とは、多くの投資家から集められた資金を1つのプールに集め、その資金をプロの運用者が株式、債券、不動産などのさまざまな資産に投資する仕組みのことを指します。投資家はこのプールに一定の額を投資することで、投資信託の一部を所有することとなります。これによって、個人投資家でも大きな資本を持たないまま、多様な資産への投資やプロの運用ノウハウを享受することが可能となります。

投資信託の主な特徴

a.多様性

少額から多くの種類の資産に分散投資が可能。

b.プロの運用

専門家による日々の資産運用が行われる。

c.流動性

基本的には毎日の基準価額に基づいて売却が可能。

② 投資信託の歴史とその役割

投資信託は、19世紀の終わり頃にヨーロッパで初めて設立されました。その起源から20世紀初頭の経済の成長期にかけて、投資信託は急速に普及しました。この普及の背景には、多くの小額投資家が自らの資金を集約し、大きな資金として効率的にリターンを追求するというシステムがありました。このシステムは、個別の投資家が単独で投資するよりも、多くの資産クラスや地域に分散投資することを容易にしました。現代では、投資信託は多くの国で広く利用され、資産の増加やリスク分散の手段としての位置づけがされています。特にリテール投資家にとっては、プロの知識や経験を活かして資産を運用する手段として非常に価値があります。

③ 投資信託と他の投資商品との違い

投資信託は、他の投資商品とは異なる特徴を持っています。以下に、主な投資商品と投資信託との違いを比較します。

項目 投資信託 株式 債券 預金
運用対象 多様な資産 企業の所有権 借入金の証書 金融機関の預かり
リターン 運用結果に依存 配当 + 株価変動 利息 + 債券価格変動 利息
リスク 資産クラスに依存 企業業績・経済状況 信用リスク・金利リスク 低リスク(預金保険制度あり)
流動性 比較的高い 高い 中 - 高(種類による) 高い
運用目的 資産増加、リスク分散 資産増加 安定収入 保全

投資信託の一番の特徴は、プロのポートフォリオマネージャーが運用する多様な資産クラスへの投資を、一つの商品で手軽に行える点です。また、少額から多様な投資を行うことが可能で、資産のリスクを分散させるというメリットがあります。株式は企業の業績や経済状況に影響を受けやすく、債券は信用リスクや金利リスクを背負うことになります。預金は最もリスクが低いとされる一方で、リターンも低めとなります。

これらの情報から、投資家は自身のリスク許容度や投資目的に合わせて、適切な投資商品を選択することができます。

2.投資信託の種類と特性

① 株式型、債券型、不動産型などの主要なカテゴリ

投資信託は、投資対象や運用方針によって様々なタイプに分けられます。以下は、投資信託の主要なカテゴリに関する説明と特徴を示す表です。

カテゴリ 投資対象 主な特徴 リスク
株式型 企業の株式 高いリターンが期待される反面、価格の変動が大きい 高い
債券型 国や企業の発行する債券 安定した利回りが期待されるが、金利変動の影響を受ける 中程度
不動産型 不動産関連の資産(土地やビルなど) 土地や物件の価値上昇による利益や賃料収入を期待 中 - 高
マネーマーケット型 短期の金融商品 安定した収益を目指す。元本保全型の商品も多い 低い
バランス型 株式と債券の両方 株と債券のバランスにより、リスクを分散させる 中程度

各カテゴリにはそれぞれの特性やリスクがあり、投資家の目的やリスク許容度に応じて選ぶことが求められます。

② ドメスティックファンドとインターナショナルファンド

投資信託は、運用される地域によっても大きく分類されます。具体的には、自国の市場だけに投資する「ドメスティックファンド」と、海外の市場にも投資を行う「インターナショナルファンド」が主要なタイプです。以下の表で、その特性やリスクを比較します。

タイプ 投資対象 主な特徴 リスク
ドメスティックファンド 自国の資産(株式、債券など) 自国の経済動向と密接に連動。リスクの分散が限られる 中程度
インターナショナルファンド 複数国の資産 地域間のリスク分散効果があるが、為替リスクを伴う 高い

投資先の地域を選ぶ際は、自国の市場だけでなく、海外の市場の動向やリスクをよく理解することが重要です。

③ インデックスファンドとアクティブファンドの違い

投資信託の運用スタイルには主に2つの方法があります。それは、「インデックスファンド」と「アクティブファンド」です。これらの違いとそれぞれの特性を理解することで、より適切な投資信託の選択が可能となります。

運用スタイル 特徴 メリット デメリット
インデックスファンド あらかじめ決められた市場指数を追尾する運用 費用が低い、市場平均のリターンを得る可能性 市場指数を上回るリターンを追求することができない
アクティブファンド ファンドマネージャーが独自の判断で資産を選択・運用 市場平均を上回るリターンを目指す 費用が高い、運用成果が不確定

各運用スタイルにはそれぞれの特徴やリスクがありますので、自身の投資目的やリスク許容度に応じて選択することが求められます。

3.投資信託のリスクとリターン

① 投資の基本:リスクとリターン

投資を行う際の基本的な原則として、リスクとリターンの関係が挙げられます。一般的に、リスクが高い投資ほど、リターンも高いとされますが、その分損失のリスクも大きくなります。逆に、リスクが低い投資は安定していますが、リターンも低めになります。

a.リスク

投資対象が期待通りの結果をもたらさない可能性。具体的には価格の変動、収益の減少、損失が生じる可能性などを指します。

b.リターン

投資によって得られる収益のこと。例えば、株式の場合は配当や株価の上昇によるキャピタルゲインなどが考えられます。

投資する際は、自分のリスク許容度や投資目的に応じて、リスクとリターンのバランスを適切に取ることが重要です。

② 投資信託における主要なリスク

投資信託を選ぶ際には、各ファンドに関連するリスクを理解し、自らのリスク許容度と照らし合わせることが重要です。以下に、投資信託における主要なリスクを挙げます。

a.市場リスク

これは市場全体の動きに関連するリスクで、経済状況や政策、地政学的な出来事など多くの要因によって引き起こされる可能性があります。

b.クレジットリスク

特に債券型投資信託で重要となるリスク。債券の発行者がデフォルトする可能性が考慮されます。

c.通貨リスク

外国の資産に投資する際に、その国の通貨の価値が変動することによるリスク。

d.流動性リスク

特定の投資が市場で取引される量が少ない場合や、市場が閉鎖されている場合などに売却するのが難しくなるリスク。

e.管理リスク

投資信託を管理する運用者の戦略や判断が不適切であった場合のリスク。

これらのリスクを適切に評価し、自身の投資目的やリスク許容度に合わせて投資信託を選ぶことが、賢い投資の第一歩となります。

③ リスクを管理し、賢く運用する方法

投資においては、リスクを避けることはできませんが、それを適切に管理し、最適なリターンを追求する方法が存在します。以下に、リスクを管理し賢く運用するための主要な方法を挙げます。

a.分散投資

一つの資産やセクターに依存することなく、多様な投資先に資金を分散させることで、特定のリスクに対する影響を軽減します。

b.再投資

投資信託からの利益や配当を、新たに投資することで、長期的な成長を追求します。これにより複利効果を享受できます。

c.定期的な再評価

投資の環境や自身のリスク許容度が変わる可能性があるため、定期的なポートフォリオの見直しは必須です。

d.教育と情報の収集

投資環境は日々変わるもの。最新の情報を得るために、市場の動向や専門家の意見、報道など多岐にわたる情報源を利用することが推奨されます。

これらの方法を取り入れることで、投資信託の運用においてリスクを適切に管理し、期待されるリターンを最大化することができます。

4.投資信託の選び方

① ファンド運用会社の評価方法

投資信託を選ぶ際、そのファンドを運用する会社の評価も重要な要因となります。運用会社の信頼性や実績、専門知識やリソースがファンドのパフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。以下は、運用会社を評価する際の主要なポイントとなります。

a.運用実績

各運用会社は自社の投資信託の過去の実績を公開しています。この実績を基に、その会社の運用能力や戦略の有効性を評価できます。

b.専門性

投資の専門家やアナリストの数や質は、運用会社の投資戦略の質を示す重要な指標となります。

c.信頼性

運用会社が過去に金融規制当局からのペナルティを受けていないか、その他の不祥事がないかを確認することで、その会社の信頼性を判断することができます。

d.リソース

大手の運用会社は、豊富なリソースや研究ネットワークを持っていることが多い。これにより、より深い市場分析や情報収集が可能となります。

これらのポイントを踏まえて、運用会社を評価することで、質の高い投資信託を選ぶ手助けとなります。

② コストと手数料を理解する

投資信託を購入する際、注目すべき点の一つがそのコストや手数料です。これらのコストや手数料は、長期的に見ると投資のリターンに大きな影響を及ぼす可能性があります。以下は、投資信託に関連する主要なコストや手数料についての概要です。

a.購入手数料 (フロントエンドロード)

この手数料は、投資信託を購入する際の初期コストとして発生します。一般的に、購入金額の一定の割合として計算されます。

b.管理費

投資信託の資産総額の一定の割合として年間に引かれる費用であり、ファンドの運用や管理に関連するコストをカバーするためのものです。

c.償還手数料 (バックエンドロード)

投資信託を売却する際に発生する手数料で、特に短期間での売却の際に高くなることがあります。

d.その他の費用

いくつかの投資信託は、交換手数料や過剰な取引費用など、他の手数料を課す場合があります。

これらのコストや手数料を理解し、比較することで、コストパフォーマンスの良い投資信託を選ぶことができます。高い手数料がかかる投資信託であっても、そのパフォーマンスが高ければ選ぶ価値がありますが、逆に低い手数料でパフォーマンスも低い場合は避けるべきです。

③ ファンドのパフォーマンスの読み方

投資信託の選定にあたって、そのパフォーマンスを評価することは必要不可欠です。しかし、パフォーマンスだけを見るのではなく、その背後にあるリスクや市場環境を理解することも大切です。以下に、ファンドのパフォーマンスを正しく読み解くためのポイントをいくつか挙げています。

a.絶対リターン

これは、ある期間に投資信託が実際に獲得したリターンを示します。単純にこの数字を見るだけでは、市場全体の動きや他の投資信託との比較が難しいため、相対リターンと合わせて評価することが重要です。

b.相対リターン

投資信託のパフォーマンスを、ベンチマークや参照指数と比較して評価する方法です。これにより、その投資信託が市場全体と比べてどれだけ優れた、または劣っているのかがわかります。

c.シャープレシオ

投資信託のリターンとリスクを同時に評価する指標です。シャープレシオが高いほど、単位リスク当たりのリターンが高いと評価されます。

d.最大ドローダウン

これは、投資信託の価値が最高値からどれだけ下落したかを示す指標です。大きなドローダウンがあると、その投資信託が大きなリスクを持っている可能性があります。

パフォーマンスを評価する際には、これらの指標だけでなく、過去の実績、運用チームの経験やスキル、投資方針など、多くの要素を総合的に考慮することが必要です。

5.効果的な投資信託の運用方針

① 投資目的と期間を明確にする

投資を始める前に、その目的を明確にしておくことは非常に重要です。投資目的は、リタイアメント資金の確保、資産の成長、教育費の準備など、さまざまです。また、それに応じて投資期間も変わります。例えば、短期のキャッシュフローを確保したい場合と、長期間にわたる資産の成長を目指す場合では、選ぶべき投資信託の種類やリスク許容度が異なります。

a.短期のキャッシュフロー

1-3年の短期間に利益を得たい場合、元本保証のある投資信託や低リスクの債券型投資信託が適しています。

b.資産の成長

中長期での資産の成長を目指す場合、株式型や不動産型などのリスクが高いがリターンも大きい投資信託が適しています。

c.教育費の準備

子供の教育費を準備するために、10-15年の期間を見据えて投資を行いたい場合、多様な資産を組み込んだ混合型の投資信託が適しています。

d.リタイアメント資金

リタイアメントまでの期間が20年以上ある場合、長期間での成長を目指す株式型やバランス型の投資信託がおすすめです。

投資の目的と期間を明確にしておくことで、適切な投資信託の選択や、リスク管理の方針を策定することができます。

② ポートフォリオの再構築と再評価の重要性

投資家がポートフォリオを作成した後でも、その組成やバランスが一定のままでいることは少ないです。市場の動向、経済の状態、あるいは投資家自身の生活や目的の変化など、さまざまな要因により、ポートフォリオのバランスが崩れることがあります。このため、一定期間ごとにポートフォリオの再評価を行い、必要に応じて再構築することが重要となります。これを「リバランス」とも呼びます。

ポートフォリオの再評価のステップとしては、以下の手順を考えます。

a.目的の確認

現在の投資目的が未だ有効であるかを確認します。

b.アセットの評価

各資産クラスの現在の価値と、設定した目標比率との差を確認します。

c.再構築の判断

目標比率と大きく乖離している場合、資産の売買を行い、バランスを再構築します。具体的な例として、もともとの目標が株式70%、債券30%だったが、市場の好調により株式が上昇し、現在の比率が株式80%、債券20%になった場合を考えてみましょう。この状態では、株を一部売却し、債券を購入することで、再び70%:30%のバランスに戻す必要があります。


このようなリバランスは、投資家が取るべきリスクを一定の範囲内に保ち、長期的な投資目的に合致したポートフォリオを維持するために行います。また、定期的なリバランスは、高値で売却、低値で購入という、投資の基本的な原則にも沿った行動を促進する効果があります。

③ ドルコスト平均法とその効果

ドルコスト平均法は、一定の金額を定期的に投資する手法を指します。例えば、毎月一定の金額で投資信託を購入する場合などがこれに当たります。この方法の最大の利点は、市場価格が高い時も安い時も同じ金額を投資するため、長期的には平均的なコストで資産を積み立てることができる点です。

ドルコスト平均法のメリット

a.市場のタイミングを気にせずに投資可能

投資家は市場の上下を予測する必要がなく、定期的に投資を継続するだけでよい。

b.長期的な投資に適している

短期的な市場の変動に左右されにくく、長期的な資産形成に有効です。

c.平均的なコストでの投資が可能

高値での購入だけでなく、低値での購入も行うため、長期的に見ると平均的なコストでの投資が実現します。


ドルコスト平均法は、特に市場の動向を予測するのが難しい初心者の投資家や、安定した資産形成を目指す投資家にとって、有効な投資法といえるでしょう。

6.投資信託の実践ガイド

① 取引口座の開設と投資信託の購入方法

投資信託を購入する前に、まずは取引口座を開設する必要があります。取引口座を開設するプロセスは、証券会社や銀行によって異なりますが、以下に一般的な手順を示します。

a.取引口座開設の手順

・証券会社や銀行の選定:初めに、手数料やサービス内容を比較し、自分の投資スタイルやニーズに合った証券会社や銀行を選びます。

・必要書類の提出:身分証明書や所得証明書など、開設に必要な書類を提出します。

・口座開設の申込:オンラインまたは店舗で口座開設の申込を行います。

・初回入金:口座が開設されたら、初回入金を行い、資金を供給します。

b.投資信託の購入方法

・目的のファンドを選定:投資信託のカタログや情報サイトを参考に、自分の投資目的に合ったファンドを選びます。

・購入手続き:選定したファンドを購入するための手続きをオンラインまたは店舗で行います。

・定期的なモニタリング:購入後は、定期的に投資の状況を確認し、必要に応じて再調整を行います。

② 継続的な投資とモニタリング

投資信託は、一度購入しただけで終わりではありません。継続的な投資とその運用状況のモニタリングが重要となります。以下、この点に関するポイントを解説します。

a.継続的な投資のメリット

・ドルコスト平均法の活用:定期的に同じ金額を投資することで、高値でも低値でも購入するため、平均的なコストで投資ができる。

・資産の積み立て:小額からでも継続的に投資することで、長期的には大きな資産を築くことができる。

・リスクの分散:一度に大量に投資するよりも、時間をかけて少しずつ投資することで市場の変動リスクを分散させることができる。

b.投資のモニタリング

・定期的なポートフォリオの確認:投資信託のパフォーマンスや資産配分の変動を定期的に確認する。

・再バランシングの検討:投資目的やリスク許容度に応じて、ポートフォリオの資産配分を再調整することを検討する。

・市場の動向やニュースのチェック:世界の経済や政治の動きなど、市場に影響を与える要因を定期的にチェックする。

③ 投資信託の税制とその対策

投資信託の運用には税制面での対応が必要です。利益を得た際の課税や非課税取扱いに関する制度など、知っておくべき基礎知識と対策を以下にまとめます。

a.投資信託の課税

・分配金の課税:投資信託から受け取る分配金には源泉徴収税がかかることが多い。

・譲渡益の課税:投資信託の売却時に生じる利益に対して税金がかかる。この税率は通常の所得税率とは異なる場合がある。

・非課税制度の活用:一定の条件下で税金が非課税となる制度が存在する。例: NISA(日本)など。

b.税制対策のポイント:

・長期保有のメリット:一定期間以上保有することで課税が軽減される制度がある国も多い。

・非課税制度の活用:NISAやiDeCo(日本)など、非課税制度を活用して投資することで、税金を節約できる。

・年間の取引履歴の管理:譲渡益を計算する際や確定申告を行う際に必要となる情報をしっかりと管理する。

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